ヒビクス軟膏

今回はヒビクス軟膏について取り上げます。

犬、猫の代表的な塗り薬になります。

まずは成分ですが、

チオストレプトン

ナイスタチン

フラジオマイシン硫酸塩

トリアムシノロンアセトニド 

からなります。


それぞれの簡単な説明を薬学的観点からしていきます。

まずは少し専門用語を使って説明しますので、分かりづらい方は次の項の「簡単に説明すると」の部分から読んで下さいね。


チオストレプトンは、ストレプトマイセス属の細菌によって産生されるポリペプチド系抗生物質です。細菌タンパク質の合成を阻害することによる抗菌作用があり、動物の乳腺炎や皮膚炎の治療薬として使用されています。


ナイスタチンはポリエンマクロライド系抗生物質であり、膜ステロールを含む感受性の真菌細胞膜と不可逆的に結合する膜障害により殺菌作用を示します。


フラジオマイシンはグラム陽性菌、グラム陰性菌、抗酸菌、レプトスピラに強い抗菌作用を有する抗生物質で、細菌細胞のリゾホームと結合して遺伝情報の誤読を起こさせることによる蛋白合成阻害を作用機序とします。


トリアムシノロンアセトニドはmediumに属するステロイドです。強さは上から順に

①strongest ②very strong  ③strong ④medium ⑤weak

となります。


簡単に説明すると

チオストレプトンは細菌の生存に必要なタンパク質を作るのを阻害します。タンパク質が合成できない細菌は死滅します。


ナイスタチンは細菌の細胞膜にくっついて、膜の構造を変化させてしまう薬です。その結果、細胞膜を物質が通過する程度が大きく変化したり、細胞膜が傷ついたりして細胞の働きが妨害され、死滅します。


フラジオマイシンも細かい作用機序は異なりますが、タンパク質合成阻害という点ではチオストレプトンと同じ様に細菌をやっつける抗生剤です。


トリアムシノロンアセトニドは下から2番目の強さの比較的弱いステロイドです。


まとめると、4つの有効成分が抗炎症作用、止痒作用、抗真菌作用、抗細菌作用を持ち、皮膚病の局所の治療に優れた医薬品ということです。


副作用ですが、副腎皮質ホルモン製剤として注意する必要があります。副腎皮質ホルモンというのは簡単に言うとステロイドのことです。

この副腎皮質ホルモンの副作用として、内服薬においては多渇症、多尿症、嘔吐、異常な体重増加などが挙げられます。

しかし、外用(塗り薬)だからといってこれらの副作用が出ない訳ではありませんので注意が必要です。ただし、過剰使用しなければこれらの副作用が出ることはめったにありませんので、適切な使用量を心掛けましょう。


使い方ですが、基本的にベタ塗りはしません。

しっかり患部全域に伸ばせる最低限量を用いてください。毛が多いところではしっかりかき分けて地肌に塗ってあげてください。毛についただけでは効果は見込めませんので…。


ワンポイントアドバイスとして、塗布するのは散歩の前にしたり、塗布後抱っこしてあげるとよいでしょう。薬を塗られたワンちゃんは舐めたり嫌がったりします。それを防ぐためにも、塗ってすぐに散歩に連れて行ってあげたり、抱っこしてあげたりして気を紛らわせてあげましょう。

ちなみに、特にステロイドは5分程度たつ頃から徐々に吸収され痒みを抑える効果が出始めますので、塗った直後どれだけ患部を触らずにいれるかが重要になってきます。